難民申請、

画像の説明 実は就労目的 留学生や実習生「乱用」増加

母国に帰国できるのに就労目的で難民認定の申請をする外国人が目立っている。申請から半年がたてば仕事に就けるようにした4年前の変更が呼び水となった形で、法務省も対策の検討を始めた。背景には、時間がかかる審査など現行の認定制度の課題がある。

関東地方のプラスチック工場で働く20代半ばのネパール人男性は昨年、難民認定の申請をした。母国で迫害などを受けていなかったが、うそをついたという。農業実習生として来日し、野菜の収穫などに携わったが、「滞在期限後も日本で仕事に就きたいと思った」。今春から働けるようになり、月収は実習生時の約7万円から20万円弱になったという。

同様に就労目的で申請をしたと打ち明けたネパール人男性も農業実習生として来日。「働いてお金がたまれば帰国するつもりだ」

福岡市の語学学校では今年、ネパール人留学生4人が相次いで寮から姿を消した。職員が調べると、栃木県小山市で暮らし、難民認定の申請をしていた。学校側は就労目的とみている。

法務省入国管理局には「実習生がいなくなって難民申請をしたらしい」との受け入れ業者からの相談や、「留学しながら難民認定申請できるのか」という日本語学校からの問い合わせが目立っている。

同省によると、2013年のネパール人の申請者数は、トルコ(658人)に次いで多い544人で、10年以降、急増している。難民支援団体などによると、ネパール人以外でも偽って申請している人がいる可能性があるが、実態はわかっていない。

■防止へ「迅速審査を」

背景には、法務省の認定制度の運用変更がある。従来は申請中の就労は原則的に認めなかったが、収入がなくて生活が不安定になるとの批判が上がった。このため10年度に変更し、申請時に在留資格を持つ人に限り、申請から半年がたてば就労できるようにした。

ところが、この変更が、農業実習生や留学生として来日した外国人のうち、手っ取り早く稼ぎたい人にとって都合が良かった。留学生は原則的に就労できずアルバイトは週に28時間以内。実習生も多くは低賃金で労働環境が悪い場合もある。難民認定を申請して半年がたてば、結果が出るまで数年はよりよい条件で働けるようになる。

NPO法人「難民支援協会」の石川えり事務局長は「帰国できるのに難民認定申請をするのは『制度の乱用』だが、そもそも迅速に審査していれば問題は起こらない」と指摘する。欧米の場合、多くの国で審査は半年程度だが、日本では最終結果が出るまで何年もかかることもある。

就労目的の虚偽申請が増えると、難民審査を受けるべき人が不利益を被ることが懸念される。法務省も問題性を認識し、有識者会議で対策を検討している。

難民問題に詳しい滝沢三郎・東洋英和女学院大学大学院教授(難民移民論)は「日本で働きたい外国人労働者を受け入れる制度が整っていないことが認定制度の乱用の一因だ」と指摘。「一定の資格のもとで『経済移民』を受け入れる政策の整備の検討が必要だ」と話す。

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