「いまこそ日本人は自信と誇りを」

画像の説明 李登輝・元台湾総統が示した日本精神

自立・憲法改正・武士道「いまこそ日本人は自信と誇りを」

「いまこそ日本人は自信と誇りを取り戻さなくてはなりません」。9月20日に大阪で行われた李登輝・元台湾総統の講演は、日本への愛情、そして励ましに貫かれていた。

独立の精神訴え

会場のグランキューブ大阪には1600人を超える聴衆が詰めかけた。20代とおぼしき若い人たちの姿も見られ、李元総統が世代を超えて日本人から支持されていることをうかがわせた。

登壇した李元総統は、91歳とは思えないほど肌につやがあり、声にも張りがあった。

「一人の友人としてみなさんにお話ししたいと思います」

冒頭部でそのように語りかけ、混迷する世界情勢を分析しながら、日本がいかに対処していくべきか、持論を展開した。アメリカが世界で指導的役割を果たすことは限界に来ている、戦国時代が到来しているとして、こう訴えた。

「(日本は)アメリカに守ってもらうというような態度ではいけません。より密接で対等な日米関係でなくてはならないのです」

「日本はアメリカから独立した存在になるとともに、アメリカの側に立って中国と対峙(たいじ)していかなければならないのです」

国際協調とともに、独立不羈(ふき)の精神を、かつて日本人として精神を形成した李元総統は訴えるのである。

憲法改正し自立を

李元総統は日本統治下の台湾に生まれ、日本の思想家や文学者の本を熱心に読みながら成長した。京都帝国大学に学び、学徒出陣で召集。戦後は台北市長などを歴任し、1988年から2000年まで台湾総統を務めた。

講演に戻る。日本がアメリカから独立した存在になるために李元総統は、憲法改正を訴えた。

「憲法を改正して、日本を真の自立した正常な国家とするべきなのです」

「日本が自立国家…アジアの平和と安全に直結」「自虐教育、日本の若者は悲惨」

その趣旨は次の通りだ。現在の憲法はもともと英語で書かれたもの、アメリカが押しつけたものである。9条は戦力の保持を禁じ、そのため日本はアメリカに安全保障を委ねることになった。憲法改正に触れることは長い間、タブーとされてきた。しかし現実から目を背け、憲法問題を放棄することは、日本という国の安全を著しく脅かす。歴史は移り変わる。時代が変化し、日本が置かれている状況も異なっているにもかかわらず、国家の根源である憲法を放置していては、日本は遠からず衰退を強いられるのではないか。武力を持つことは戦争を意味するのでない。日本が再生し自立した国家として歩むことは、アジアの平和と安全につながる--。

そこに一貫してあったのは、日本が自立することへの応援であり叱咤だっただろう。日本が戦後のアメリカ依存を脱し真の独立国となること、その上で国際協調の道を歩むことへの応援であり叱咤であると、筆者は受け止めた。

武士道築いた民族の血

講演は終盤、戦後日本の偏向にも及んだ。当欄で戦後日本の左傾と呼んでいるものであり、戦争への反動から終戦までの日本を一方的に罪悪として見る見方である。

「日本のみなさんにエールを送りたいと思います。いまこそ日本人は自信と誇りを取り戻さなくてはいけません」

今の日本、特に若い人がかわいそうなのは、むかしの日本がアジアを侵略した悪い国だったと一方的な教育を受けていることだ--そう李元総統はいった。日本の学校教育では、日本は台湾を植民地にして人民を搾取し苦しめてきたと教えられているようだが、それは真っ赤な嘘だ。多くの能力ある日本人が台湾のために働いた。そのおかげで現在の台湾がある--。

「戦後の日本人が価値観を180度変えてしまったことを、非常に残念に思っています。日本のみなさんは一刻も早く、戦後の自虐的価値観から解放されなければなりません」

「武士道という不文律を築き上げた民族の血…誇るべきだ」

「そのためには、日本人がもっと自信を持ち、かつて武士道という不文律を築き上げてきた民族の血を引いていることを誇るべきです。日本人としてのアイデンティティを持つことで初めて、日本は国際社会における役割を担うことができるのです」

かつての日本の精神が台湾で受け継がれていることを、まざまざと見る。講演で語られたのは、まぎれもない日本精神だった。左傾した思潮、自虐的な風潮に長らく支配されてきた戦後の果てに、くっきりと現れてきたこの日本精神は、力強く美しかった。

講演のさなか、何度も聴衆の間から拍手が起こった。講演が終わるとスタンディング・オベーションとなり、拍手はしばらく鳴り止まなかった。

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