“恫喝”

画像の説明 韓国は米国に「媚び」てもよいが、中国に「損」をさせるな…

中国から属国扱いで“恫喝”される韓国のジレンマ

韓国へのミサイル配備をめぐって、中国と米国が“つばぜり合い”を繰り広げている。米国は韓国国内にTHAAD(サード=中高度ミサイル迎撃システム)の配備を計画しているが、これに中国官営メディアの環球網が真っ向から反論。「韓国は米国に媚(こ)びてもよいが、中国に損をさせてはならない」と題した記事を掲載した。米国と中国という2大国が“竜虎相打つ”状況のなか、韓国の事情を無視して進むTHAAD配備の行方は-。

THAAD配備が現実味を帯び

THAADは、米国国防総省がミサイル防御網(MD)の中核と位置づける、弾道ミサイル迎撃システム。日本でも導入されているPAC3(パトリオット)が迎撃高度15キロまでと低高度での迎撃を主とするのに対し、THAADは大気圏外での迎撃を可能としている。

これを米軍が韓国国内に配備するとの情報は以前から韓国マスコミなどが取り上げていたが、今年5月28日には米経済紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が「米国、韓国へのミサイル防衛システム配備を検討」と報道。一部システム設置の候補地を調査したことも報じたため、信憑(しんぴょう)性が一気に高まるとともに、中国側を刺激することになった。

中国の「虎の子」は核

空母や強襲揚陸艦、新型戦闘機の開発など近年、急激な軍拡を進めている中国だが、最も強力な戦力を保持しているのは冷戦時の昔から変わらず「中国人民解放軍第2砲兵部隊」、つまり核弾頭装備の弾道ミサイルを装備する部隊だ。中国が持つとされる約200発の核弾頭を引き受け、米国はもちろん、日本もその標的。一説には「中国は800の核弾道ミサイルを持っており、うち100発は日本に向いている」との指摘もある。

しかしTHAADは、こうした核戦力をほぼ無力化する性能を秘めている。しかも中国から至近距離の韓国に配備すれば、発射後わずかの時間で捕捉が可能で、迎撃力は飛躍的に増加する。“核による恫喝(どうかつ)”を有効活用する中国にとっては、虎の子の兵器がガラクタになりかねないのだ。

「本当の脅威は北朝鮮」と中国が言う不思議

このため中国は政府の代弁者である官制メディアを使って、あの手この手でTHAAD配備を非難。9月17日の環球網(電子版)は「配備は中国の安全保障にとって深刻な脅威」と本音を全開。「配備について韓米ともに北朝鮮の武力挑発を牽制(けんせい)するためとしているが、これは言い訳だ。北朝鮮の脅威は長距離砲であり弾道ミサイルではない」と主張した。

実際、北朝鮮の軍備はそういう面がある。

韓国と北朝鮮の国境から韓国の首都ソウル中心部までの距離は約40キロ、同市郊外までなら約30キロ。これに対し北朝鮮の130ミリ砲「M46」はロケット補助推進弾を使った場合、射程38キロ。203ミリ自走砲だと55キロで完全に射程内。

今年に入って北朝鮮が威嚇射撃を繰り返している新型の300ミリ多連装自走ロケット砲(MRL)「KN-09」では射程は150~200キロともされる。

こうした安価で大量の車両・砲が集中砲火をしかける危機に対して、高価なミサイルで迎撃するのは現実性に欠ける。

属国に命じるかのような…

こうした観点から、環球網では「THAADの矛先の筆頭は中国であると韓国は分かっているはずだ」と前置きしたうえで、「韓国は米国の機嫌をとるために中国を傷つけてはならない。具体的にいえば、THAADを配備させるべきではない」と、属国に命じるような表現で韓国に“警鐘”を鳴らした。

さらに「韓国は中国とのつきあいで、相手にばかり『徳を持って恨みに報いる』ことを期待してはならない」とも。

中国なりに筋を通した主張のようにも見えるが、天安門事件当時、世界から孤立した中国に対しほぼ唯一、経済的に手を差し伸べた日本からすれば、「自らを棚に上げて何を言うか」と首をかしげたくもなる。

一方の米国はこうした中国の主張に対し、「THAADは矛ではなく盾だ。他国の脅威にならない」(韓米連合軍のスカパロッティ司令官)と反論。韓国の中央日報(電子版)によると、同司令官は「THAADは防御用の武器であり、中国が敏感な反応を見せる必要はない」と述べたという。

で、やっぱり無視される韓国…儲かる輸出も観光も中国頼みのジレンマ

韓国の事情は無視か

米国は軍事予算削減で世界各地の基地や部隊を整理統合中。対韓国でも、1950年の朝鮮戦争以来、実質的に米軍が持っていた朝鮮半島の戦時作戦統制権を来年に返還する方針で、在韓兵力の削減も進めており、主力部隊をソウルより南に移すことも決めている。

そんななか、THAAD配備は米軍が唯一、積極的に進めている軍備増強の計画だ。これに韓国が反対するなら、米軍が韓国にいるメリットも激減する。

韓国では軍幹部が「北朝鮮と戦争になれば、韓国軍だけでは負ける」と公言。米軍の兵力なしには国が成り立たないのは朝鮮戦争以来の呪縛だ。

一方、経済面では中国なしには成り立たない。韓国銀行(中央銀行)によると、昨年の韓国の輸出額、6171億ドルのうち、21・9%が中国向け。わずかな内需も中国人観光客の落とすカネがカンフル剤で、内外需とも中国抜きにはありえない。

中国にそっぽを向かれれば経済が立ちゆかなくなるが、米軍に去られれば防衛体制が破綻する。どちらに偏っても国家の危機に直結しかねない。中国に配慮してか、キム・クァンジン大統領府国家安保室長は「THAADの導入問題は、韓米間で協議されていない」と述べているが…。米軍は配備する気満々なだけに、韓国のジレンマは増すばかりだ。

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