ビールを飲んで救助を待った韓国「セウォル号」の船員…真っ先に救助され、「頭のいい人間は生き残った」

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韓国の旅客船「セウォル号」沈没事故を巡る裁判で、乗客の救助を怠った船員から衝撃的な証言が相次いでいる。「(救助を待つ間に)ビール飲んだ」「頭のいい人間は生き残った」。船員たちは乗客を助けず、真っ先に救助船に乗った。乗客の安全を守らなければならないはずなのに、その意識は皆無。その上、自分さえ良ければいいという身勝手な論理を振りかざす。韓国社会の“膿み”は出続けている。

ビールを飲んだ…たばこも吸った

中央日報やハンギョレ新聞(いずれも電子版)などによると、9月2日に光州地裁で開かれた公判で、1等機関士がこう証言したという。

「機関長と一緒に缶ビールを飲んだ。機関長はたばこも吸った」

この1等機関士は4月16日午前9時ごろ、機関室にいると、船が左右に揺れて10~15度に傾いた状態になった。機関士から脱出命令を受け、船員7人は救命胴衣を着て3階の船室の廊下で待機。9時40分前、同僚とともに、海洋警察の救助船に真っ先に救助された。

ビールを口にしたのは、待機している間のこと。機関長とビールを回し飲みしたことについて、1等機関士は「錯乱した状態だったので落ち着こうとして、他の機関部職員の客室からビールを1缶持ってきて一口飲んだ」と説明した。そして機関長は一服した。

急な事態に慌てたのは分からなくはない。だが、船員たちは救助されるまでの間に驚くような行為を続けていた。

この間、機関士の一人は携帯電話で自宅に連絡し「船が沈み始めた。死ぬかもしれない」と連絡。それだけではない。一部の船員はセウォル号の調理員2人が負傷していたことを知りながら救護しなかった。また、脱出した際には海水に浸かっておらず、乗客が助かる状況にあったが、海洋警察には乗客が待っていることを伝えなかった。乗客のいる船室は船員が集まった廊下から10メートルと離れていなかったとされる。

「自分さえよければいい」「自分が助かればいい」。そんな姿勢さえ見えるが、船員たちの間で、乗客を救護する義務がいかに欠如していたかがよく分かる。船員の一人は翌3日に行われた自身の公判でこう証言したという。

「頭のいい人間は生き残った」

韓国でもっとも危険な船

もっとも、セウォル号の裁判ではこれまでも、あきれるような“事実”が次々と飛び出している。

「旅客船が沈没中ということしか聞かされておらず、船内に数百人がいたことなど、何の情報も知らされていなかった」

朝鮮日報(電子版)によると、光州地裁で8月13日行われた公判で、救助活動にあたったヘリコプター3機の航空救助士たちはそう証言した。そもそもセウォル号の乗客数さえ知らなかった。

さらに、救助された高校生たちも7月の判で、当時の様子をこう証言した。

「手を伸ばせば届く距離に海洋警察がいた。海洋警察は出てこいとも言わず船に上がることもなかった」

「(海洋警察は)非常口から落ちた人たちを引き上げるだけだった。非常口の内側に生徒がたくさん残っていると話したが、眺めているだけだった」

中央日報によると、3等機関士の女性被告は裁判の中で、「甲板長がこの船(セウォル号)は大韓民国で最も危険な船というのを聞いたことがある。へたをすると転覆する恐れがある船だから気をつけなさいと話していた」と証言した。

救助・救護する責任がある人たちは誰も、その責務を担うことはなかった。船員たちは知っていたのだ。セウォル号が危ないことを。

責任のなすりつけあい

3等機関士の証言を裏付けるような証言もあった。

「セウォル号で4カ月勤務する間、乗客救助法を習ったことも、訓練をしたこともなかった」

前述の1等機関士はこう述べた上で、さらに、乗客の救助、船外の脱出を指示することがなかった船長について、「職務放棄だ」と述べた。自らの責務は棚に上げて、責任を押しつけた格好だ。

ただ、その船長らも「海洋警察が出動したので乗客たちは救助されると思った」と主張している。要するに責任のなすりつけあいが行われているに過ぎない。

さまざまな形で原因究明、責任追及が進められているセウォル号沈没事故をめぐる裁判。ただ、ハンギョレ新聞が、海洋警察と民間の救難業者との癒着ぶりを指摘するなど、関連捜査はまだ終結していない。

事故当時の管制業務を担っていた珍島会場交通管制センターで服務規程に違反した業務を行っていた担当者13人に対する初公判は9月29日に開催。船長らに対する審理は10月後半に終わる予定で、11月中旬までに判決が言い渡される見込みだ。

今後の行方を注視したいが、無責任で、いい加減な社会の“体質”が明るみになり続けることだけは間違いない。

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