最高の師弟 

aki onsen 「長嶋監督と2人で素振りをした時間ですかね」。

2年前、日米通算20年間のプロ野球人生に別れを告げた松井秀喜さんは、「最も印象深いシーン」を聞かれてこう答えた。

▼長嶋茂雄監督の素振りの指導は、巨人入団2年目から、監督退任の日まで続いた。いや、松井選手がヤンキースに入団してからも、愛(まな)弟子のスイングをチェックするために、ニューヨークまで出向いたという(『不滅の師弟』柏英樹著、こう書房)。

▼確かに、名選手の誕生には名伯楽が欠かせない。全米オープンテニス準決勝で、世界ランキング1位のジョコビッチ選手を破った錦織圭選手もその一人だ。すでにニューヨークの地元紙は、快進撃を「チャンの弟子の番狂わせ」と報じてきた。

▼今季から指導しているマイケル・チャン氏が重視したのは、同じプレーを何度も反復する練習だ。解説者の松岡修造さんによると、小学生時代から知っている錦織選手は天才肌で、地味な練習を嫌う傾向があった。

▼しかし、自分と同じテニス選手としては小柄な体形ながら、史上最年少で全仏オープン覇者となったチャン氏のテニス哲学には、錦織選手も従うほかなかった。見違えるようにたくましくなった心と体、そして土壇場に追い込まれてもショットがぶれなくなったのは、その練習の賜(たまもの)だという。チャン氏の指導法は、長嶋監督の素振りに通じるところがある。

▼もちろん、錦織選手を支えるのはチャン氏だけではない。応援に駆けつけている両親をはじめ、地元島根県のコーチ、米国留学を支援したソニー元副社長の盛田正明氏…。人の縁に恵まれて才能を開花させ、数々の困難を乗り越えてきた。そんな若武者がついに、グランドスラムの決勝という、夢の舞台に立つた。

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