国連演説

画像の説明 首相の重い国際公約

安倍首相が国連総会の一般討論演説で、中東の過激派「イスラム国」との戦いに関連し、難民支援などに計約5千万ドルを拠出すると表明した。

演説後の記者会見では、難民や周辺国への人道支援など「軍事的貢献でない形で可能な範囲の支援を行う」とも語った。

日本は米国などの軍事攻撃には関与せず、あくまで非軍事の支援に徹する方針を国内外に示したことになる。

では、日本として何ができるのか。テロ対策での国際的な連携はもとより、難民の受け入れなど、平和的な支援に知恵を絞らなければならない。

米軍などのシリア領内での空爆について、首相の見解は「やむを得ない措置だったと理解している」というものだった。

空爆にあたっては、シリア政府からの明確な要請も、国連安全保障理事会での決議もなかった。国際法上の根拠には疑問が残り、「支持」でなく「理解」にとどめたのだろう。

集団的自衛権の行使容認を閣議決定した政権がどう振る舞うか。ここは国際社会での日本のありようが問われる。

自衛隊への憲法上の制約がゆるめられ、政治判断で自衛隊を動かす余地が大きくなった。

もちろん、閣議決定だけで自衛隊は動かせない。関連の立法措置が必要であり、自衛隊の活動の範囲を規定する歯止めなど具体的な中身は今後の国会論議にかかっている。

「イスラム国」との戦いは長期化が予想されており、米国が自衛隊の支援に期待する可能性もある。だが、首相自身が「軍事的貢献でない支援」と国際社会に約束した。そのことを忘れてはならない。

一般討論演説で首相は改めて積極的平和主義を掲げた。各国と協力し、海外の紛争や安全保障上の課題に関与していく考え方だが、軍事的貢献ばかりが国際協力ではない。

紛争から一定の距離をとり、非軍事的な手段で平和構築をはかってきた戦後日本の歩みは、世界に誇れるものだ。

日米関係は重要だが、国際的な支援のあり方は各国がそれぞれ判断すべきことだろう。米国とは違う独自の立場で、その個性をいかすべきではないか。

国連常任理事国入りに改めて意欲を示した演説には、こんな一節も盛り込まれた。

「日本の未来は既往70年の延長上にある。不戦の誓いこそは、日本の国民が世々代々、受け継いでいくものだ」

この言葉もまた、首相の重い国際公約となる。

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