【植物国家】

ススキ新着 日本は【植物国家】

江戸時代は自然エネルギーである太陽エネルギーだけで生きていた時代とも言われています。それを表した【植物国家】という表現がぴったりと感じます。

「バイオマスで生きた江戸時代」

日本では、「リサイクル」や「ボランティア」のように、昔は普通にやっていたことを理屈を付けて止めてしまい、その結果悪い状態になってしまってから、カタカナ英語でやり直していることが多いようです。

ただ、バイオマスの場合は同じカタカナ英語のケースでも少し違い、元々の我々の伝統的な循環型生活の一部として取りあげられているようです。

我々は簡単に「循環型社会に戻ろう」と言いますが、今はそういうことは絶対にできないようになっています。

なぜかと言うと、現在の日本では1人当たり約12万kcal/日という膨大なエネルギーを使って暮らしており、そのうちの10万kcalが化石燃料です。化石燃料は1度燃やしてしまえば絶対に元に戻ることがありません。リサイクルをするのにも化石燃料が必要なので、本当のリサイクルというのはできなくなっています。

私は、今の世界を一方通行を略して「一通文明」と言っています。一方的に資源の利用は進んでおり、元に戻ることはほとんどありません。私たちの言っているリサイクルとは、一方通行のベルトコンベアーの上で、グルグル独楽を回しているような形の循環型社会なのです。

それでは江戸時代はというと、私は「ターンテーブル型」と言っているのですが、世の中全体がレコードを回すターンテーブルのようにグルグル回っている本当の循環型社会です。1年で1回転するようになっている。なぜ1年単位で元に戻るかというと、バイオマスだからです。

私の場合、バイオマスという言葉を「大量にある生物資源、主に植物資源」という意味で使っています。

江戸時代の生活は、日用に使う材料のほとんど全部が植物性です。それも、成長の非常に早い植物を使います。使うのをやめて廃棄しても、燃やしても、最終的には二酸化炭素と水になって、来年生えてくる植物の原料になり、空気中の二酸化炭素が増えることなく、1年経つと大体元に戻ります。

もちろん、金属製品や陶磁器など植物製品でないものもありますが、金属の精錬も陶磁器を焼くのも木炭などのバイオマス資材を使いました。ある範囲内で上手に使っている限り、植物材料は決してなくなることはありません。

それを運営しているのは太陽エネルギーによる光合成です。二酸化炭素と水が光のエネルギーによって植物体に戻ります。

江戸時代のバイオマス利用の一番わかりやすい例が稲作です。1720年頃の人口は約3,000万~3,100万人で、このうち半分近くの約1,400万人が稲作に従事していたらしいのです。水田稲作ほど日本の国土に適した農業はありませんでした。同年代のヨーロッパの小麦農業に比べると、江戸時代後期の水田稲作では同じ面積でヨーロッパの10倍ぐらいの人口を養うことができました。
昔はなるべくわらの沢山取れる稲を作ったそうです。

米は食べた後排せつ物となります。現在では膨大なエネルギーを使って処理していますが、昔は下肥として販売しました。下肥は1年以内に土に戻り、下水に流れることはいっさいありません。ですから江戸でも大阪でも川には飲める水が流れていました。

井戸水は雑用水、洗濯や掃除に使って、飲み水は川の水を使う。川に飲める水が流れているというのは、世界中どこにもありません。

農家にしてみれば、農作物を都市に入れると、肥料になって出てくるということで、町というのは食べ物を肥料に変性する装置という考え方もなり立つと思います。

わらについては研究家の記録によると、半分は堆肥あるいは厩肥として農地に戻しました。

それから30%ぐらいを燃料、灰の材料に使う。灰は重要なカリ肥料で、町を回って灰を買い集める「灰買い」という商売がありました。灰の文化は世界中にあるそうですが、灰を商品として商人に売っていたのは、私の調べた限りでは日本以外どこにもない。灰も一種のバイオマスとして、商品として通用している品物なのです。

残りの20%ぐらいがわら製品になります。フォン・シーボルトは、日記の中に「旅行しているとあちらこちらにわら靴の山がある。旅人が決まったところで履き替えている。それを農家の人が持っていって肥料にするのだ」と書いています。今の靴と違い、わら草履は長持ちしないが要らなくなった途端に資源になる。燃やせば燃料になり、その灰は灰買いが買っていきます。

米もわらも1年経つときれいに消えてなくなる。これを循環させているのは太陽エネルギーだけです。江戸時代の動力の99%以上は人力ですが、人間は主に昨年度産の穀物で動いています。昨年度産の穀物はだれがつくったかというと、昨年度の人間と太陽エネルギーがつくるのです。原料について考えれば、私たちは化石燃料製、我々のご先祖はバイオマス製です。

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