安倍政権考

画像の説明 「長期政権」を築く2人の落差

歴代最多に並ぶ5人の女性閣僚に囲まれ、記念撮影に向かう安倍首相

首相と全閣僚が同じ顔ぶれのまま第2次安倍晋三政権が2月24日で426日となり、戦後内閣で最長記録を更新したことを最初に報じたのは産経新聞だった。「こんなに安定した政権はあっただろうか」との素朴な疑問から資料をあさった結果、判明した事実だった。

■安定政権ゆえの外交スタイル

未曾有の安定政権ということだろうが、次のような事実も安倍首相の好調ぶりを裏付ける。36年ぶりミャンマー、29年ぶりパプアニューギニア、ポルトガルとコロンビアは初めて-。安倍首相が第2次政権の約1年8カ月で、日本の首相として訪れた外国の一例だ。

精力的に外遊を重ねる安倍首相の訪問国は9月のスリランカで49カ国。約5年5カ月に及んだ小泉純一郎政権の48カ国を早くも超えた。しかも、日本の首相が疎遠だった国を訪れるケースが目立つ。

例えば10年以上ぶりの訪問だけをみても、ブルネイ、オマーン、スペイン、ニュージーランド、チリ、バングラデシュ、スリランカを加えて計9カ国に達する。初訪問国は、冒頭の2カ国に加えアイルランド、バーレーン、ジブチ、コートジボワール、モザンビーク、トリニダード・トバゴの計8カ国だ。

外交の要諦は、トップレベルの交流にあることは論をまたない。日本の首相の外遊先といえば、米国や中国、韓国、主要8カ国(G8)首脳会議などの国際会議の開催国が相場だ。首相が1年間で交代していたら、南米やアフリカまで足を伸ばすことは難しい。長期安定政権を視野に「地球儀を俯(ふ)瞰(かん)する外交」を掲げて戦略的に外遊先を選ぶ安倍首相のなせる業といえる。

■代案なき批判の民主・海江田代表

実は「長期政権」を築く政党党首は、ほかにもいる。安倍首相よりも1日早く就任した民主党の海江田万里代表だ。

海江田氏の在任期間は13日で628日。同党代表の連続在任記録としては、鳩山由紀夫氏の1173日、小沢一郎氏の1136日に次ぐ歴代3位を更新中だ。通算でも鳩山氏(1558日)、菅直人氏(1511日)、小沢氏(1136日)に続き堂々4位に位置する。

しかし、野党第一党のトップとして長きに渡る海江田氏の軸は一向に定まらない。今夏以降、海江田氏は安倍政権への対決色を鮮明にする傾向にあるが、集団的自衛権の行使、消費税の10%引き上げ、原発再稼働の是非といった主要政策への具体案ははっきりしない。海江田氏が何か言えば、それとは逆の発言が党内から噴出する事態も絶えない。

海江田氏にとっては、安倍政権の経済政策「アベノミクス」も攻撃の対象のようだ。「地方はアベノミクスの恩恵に浴していない。むしろ物価の上昇に悲鳴が上がっているのが現実だ」と批判的だ。批判は大いに結構だが、「では、民主党ならばどうするのか」は明瞭ではない。民主党は2年前まで政権を担っていた。まさか「批判するだけの野党」「政権を倒すことが目的化した野党」に戻るとでもいうのだろうか。

日本維新の会の橋下徹代表(大阪市長)は、合流を目指す結いの党と7日に開いた合同研修会で、こう言い放った。

「野党議員が『これから日本の景気が悪くなる。これはチャンスだ。安倍政権の旗色が悪くなる』と言っているのを聞いて愕然(がくぜん)とした。政権の足を引っ張り、とにかく政権奪取だけが自己目的化している。これじゃあ日本は良くならない」

民主党の現状を念頭に置いた発言で、核心を突いている。国民から見れば、自民党でも民主党でも、きちんとやるべきことをやってくれれば何でもいいというのが本音だろう。立場が違うとはいえ、ほぼ同じ長さでトップに立つ2人の落差は、あまりにも大きい。

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