空爆拡大

画像の説明  開始1カ月、戦略見えず 米国

米オバマ政権がイラクで過激派への空爆を始めてから8日で1カ月。米国民の保護と人道目的を掲げて限定的に始めたものの、対象地域は徐々に拡大しており、出口は見えないままだ。

米軍は6日から、バグダッドの北西にあるハディサ・ダム周辺での空爆を始め、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」の武装車両などを破壊した。ダムがあるアンバル州での空爆は初めてで、これまで北部に限定してきた空爆を拡大した。

ホワイトハウス国家安全保障会議は7日に出した声明で「ダムが破壊されれば洪水の被害がバグダッド空港に駐留する米軍部隊にも及びかねない」と拡大の理由を説明した。

8月8日に始まった空爆はこれまでに140回を超えた。米軍の被害は出ていないが、この間に「イスラム国」に拘束されていた米国人ジャーナリスト2人が殺害されるなど事態は泥沼化している。

米ABCニュースとワシントン・ポスト紙が8月20日に発表した合同世論調査では、54%がイスラム国への空爆を支持し、6月に実施した調査よりも9ポイント上昇したという。

戦闘が長引く中、オバマ大統領は7日に放送されたNBCのインタビューで、10日に国民向けに演説し、今後の対「イスラム国」戦略を示すと明らかにした。

焦点は、当面の軍事作戦の目標をどこに設定し、どう達成するかだ。

オバマ氏は「イスラム国を弱体化させ、最終的に打倒するのが目標だ」と語ったが、容易ではなさそうだ。米国内では、「イスラム国」の本拠地があるシリアでの空爆が必要という声が高まっている。しかし、イラクと異なり、米国と緊張関係にあるシリアでは、政府軍による地上からの支援は期待できない。米軍の戦闘部隊派遣については国内世論の反対が強く、オバマ氏も「(過去の)イラク戦争とは違い、地上部隊は送らない」と改めて強調した。

もう一つの焦点は、イラク国内の和解や国際的な「対イスラム国」連合構築をどう進めるかだ。

オバマ氏は5日までの北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で各国に協力を呼びかけ、イギリスやフランスなど10カ国で協力策を話し合った。イラクの周辺諸国にも協力を求めており、オバマ氏は「サウジアラビアやヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコといった国々に加わってもらう必要がある」と話した。(ワシントン=大島隆)

■イラク新政権、組閣難航

混乱収束の期待を受けて就任したイラクのアバディ新首相は8日にも閣僚名簿を発表し、国民議会(国会)に承認を求める見通しだ。ただ、ポストをめぐる宗派間の調整が一部で難航している。米国はイラク政府による挙国一致体制の構築を軍事支援強化の前提としており、組閣が遅れれば軍事戦略に影響を与える恐れもある。

イラクメディアの報道によると、38ある閣僚ポストのうち、調整が難航しているのは国防相と内務相。軍や治安部隊を抱えるだけに、イスラム教シーア派とスンニ派の政党連合がそれぞれの人事案を譲らない状況が続いている。

多数派のシーア派政党出身のアバディ氏は、同派に偏重してスンニ派住民や軍人の離反を招いたマリキ政権の反省から、スンニ派やクルド人勢力の協力を優先して組閣を進めてきた。

だが、スンニ派の政党連合は同派の権利拡大など20項目近い「協力条件」を提示。議席数を大幅に上回る4割の閣僚ポストを要求した。クルド人勢力も、クルド地域政府の予算拡充などを突きつけ、シーア派からは反発が強まっている。

ただ、過激派の脅威が国土を覆うなか、各勢力とも米国との協力の必要性については一致している。組閣期限が迫っているため、一部の閣僚ポストは首相が代行し、新政府の発足を優先する案も浮上している。

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