あなたを襲う相続増税の現実

画像の説明 首都圏戸建てを一網打尽!?

東京都内でも地価が高いことで知られるJR中央線四ツ谷駅。先祖代々この地に住む神谷慶子さん(仮名、79歳)は最近、新聞報道や雑誌の誌面をにぎわす「相続増税」の文字に心がざわついている。

無理もない。夫が先立ってからはや11年、1人では持て余す広めの一軒家に暮らしてきたが、最近のうだるような暑さに身体が耐え切れず、道端で倒れて病院に運ばれたのは、つい先日のことだ。

息子2人はそれぞれ銀行と商社に勤めており、米国と欧州に家族と共に駐在中だ。頑張っている息子たちに心配をかけまいと、入院したことは知らせなかった。

「そろそろ後のことを考えておかないと……」

そう考え始めた神谷さんが帰らぬ人となったのは、それからしばらくしてのことだった。

訃報を聞いた息子たちが帰国したのは、母が亡くなってから2日後。慌ただしく葬儀を執り行い、その後、久しぶりに会った兄弟同士でしみじみ母の思い出を語っていた。そのとき、ふと長男の洋平さんが、葬儀に参列してくれた友人の弁護士から「相続は大丈夫か?」と聞かれたことを思い出した。

にわかに不安になった洋平さんは、翌日、友人の弁護士に電話をかけ、相続に強い税理士を紹介してもらった。後日、その税理士にざっと相続税を計算してもらったところ、その結果に洋平さんは思わず叫んだ。

「えっ、4420万円も相続税がかかるんですか!」

父が亡くなった時、相続税はかからなかったと聞いていた洋平さんは驚いた。税理士に詳しく聞くと、父から母への相続は1次相続といって配偶者の控除が大きいため、ほとんど相続税がかからないとのことだ。ところが今回は、母が亡くなったので大きな控除枠がなくなる2次相続となり、多額の相続税がかかるというのだ。

それでも、税理士によれば、来年以降に母が亡くなっていたら1000万円以上、相続税が増えていたという。あらためて、相続税の怖さを知った洋平さんだった――。

ただでさえ、2015年1月1日から、相続財産から差し引くことができる基礎控除が4割も削減され、最高税率も引き上げられるのに加え、相続財産の過半を占める不動産の価格が上昇傾向にあることで負担がずっしり増すのです。

実際、相続税の算出の基となる路線価が7月に公表されましたが、三大都市圏の路線価は6年ぶりにそろって上昇に転じています。

「立川で坪単価342万円なんて2年前の新宿の価格ですよ!ありえない」

野村不動産が8月に売り出したタワーマンション「プラウドタワー立川」。JR新宿駅から快速で約30分、JR立川駅に直結している好立地とはいえ、その価格設定に不動産業界関係者は度肝を抜かれた。さらに驚きだったのは、売り出した230戸が即日完売だったことだ。

もともと多摩地区の交通の要所であった立川は近年、商業施設の集積が進んだことで“地位向上”が著しい。「多摩エリアの首都」と呼ぶ向きもあるほどだ。

それでも、「坪単価250万円が妥当」というのが、業界関係者の一致した見方。野村不動産の岩切真吾執行役員も「確かに周辺相場と比べて、はるかに高い」と認めるにもかかわらず、超強気の価格設定で勝算があると踏んだのはなぜか――。

では、相続税はどれくらい増えるのでしょうか。そこで今回、ある前提に基づいて試算した増税データを一目見てわかるように、地図上に落とし込みました。対象地域は、首都圏(一都三県)をはじめ、大阪、名古屋、仙台、広島です。

また、この特集では、相続を一つの巨大市場とも捉えて展開しています。野村資本市場研究所によれば、相続によって移転する資産は、毎年50兆円を越えると推定されるほど巨大なものなのです。これは日本のGDPの1割に匹敵する規模で、相続に関係する、とても大きなビジネスチャンスが広がっているともいえます。

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