おわびすべき対象は誰か

103 (3) 朝日新聞は4日付朝刊に、ジャーナリスト、池上彰さんのコラムを掲載した。

「慰安婦報道検証 訂正、遅きに失したのでは」と題されたコラムは当初、朝日側が掲載を拒んでいた。

4日付同紙の1面とコラムの掲載面には、一転して掲載に至った説明と、池上さんと読者に対する「おわび」の文言がある。

大きな疑問がある。

朝日新聞が8月5、6日付で「慰安婦問題を考える」と題して掲載した大型検証記事では、韓国済州島で「慰安婦狩り」に関わったなどとする吉田清治氏の証言について、「証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します」としながら、どこにも「おわび」の字句はなかった。

まず、おわびすべき相手は、誰だったのだろう。虚偽の吉田証言などで長く尊厳を傷つけられ続けた、日本と、すべての国民だったはずではないのか。

吉田証言について朝日新聞は28日付朝刊でも「核心は変わらず」との記事を掲載し、平成5年に作成された河野洋平官房長官談話には反映されなかった-として、その影響を過小評価した。

だが、吉田証言は国連人権委員会のクマラスワミ報告でも証拠として言及されており、虚報は広く国際社会に宣伝された。朝日新聞が証言の虚偽を認めるなら、同報告などの内容についても、自ら訂正を求めるべきだろう。

検証記事では「慰安婦」と「挺身(ていしん)隊」の混同、誤用についても認めながら、記事の取り消しには言及していない。だがこの混同が、「慰安婦像」にみられる「朝鮮人女性20万人を強制連行」といった数字の独り歩きを招く発端となったのだ。

米国各地でも慰安婦像の設置が進んでいる。朝日新聞こそ、その欺瞞(ぎまん)性を指摘する先頭に立つべきではないか。

池上さんはコラムの冒頭で「過ちを訂正するなら、謝罪もするべきではないか」と記した。この問いかけに対しても、朝日新聞は何も答えていない。

朝日新聞は、対象に、挺身隊との混同記事を加えたうえで取り消す記事を明示し、社として公に謝罪すべきだ。国会招致といった報道に対する公権力の介入を招かないためにも、メディア間の相互批判と、報道機関としての責任ある対応が不可欠である。

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