人類、危機一髪

交通信号の日「太陽風」あわや200兆円損害 
2年前に発生し1週間の差で直撃回避
米ニューヨーク・マンハッタンで、太陽が大通りの延長線上のビルの谷間に沈む「マンハッタンヘンジ」の様子をスマートフォン等に収めようとする人々。しかし、強力な太陽風の直撃を受ければ、撮影どころではなく、機器が破壊されるのは必至だ
2年前に太陽から強力な太陽風が放出され、地球をかすめたが、もし地球を直撃していれば、「全世界が被る経済的損失は2兆ドル(約200兆円)にも及び、現代文明を18世紀に後退させる」ほど威力があるものだったことが分かり、米航空宇宙局(NASA)が発表した。NASAは報告書の表題を「ニアミス:2012年7月の巨大太陽風」とし、もし放出が1週間早かったら地球を直撃していたと指摘している。まさに人類は、暗黒時代に陥りかねない危機一髪の状況に遭遇していたのである。
過去150年間で最強
太陽風とは、太陽で非常に大規模な太陽フレア(火炎=黒点付近が爆発的に明るさを増す現象)が発生した際に放出される高速度の荷電微粒子流のことで、主に陽子と電子から成る。含まれる電磁波、粒子線、粒子などが、地球上や地球周辺の人工衛星などに被害をもたらすことで知られ、もし地球を直撃した場合、電力網、通信、位置測位システムの広範な停止が想定されている。
NASAによると、2012年7月23日に発生し、地球の公転軌道上を秒速約3000キロ(通常の太陽風の4倍の速さ)で駆け抜けた太陽風は、過去150年間で最も強力なものだった。軌道上の位置は地球が1週間前に通過した地点であり、NASAの研究員で米コロラド大学・大気宇宙物理学研究所のダニエル・ベーカー教授は「何が起きているかを理解している人はほとんどいなかったが、私たちはとてつもない幸運で難を逃れた。太陽風の直撃を受けていれば、今でも後始末に追われ、復旧には何年もかかったであろう」と話している。
直撃されれば、電力網と通信網は地球規模で壊滅的なダメージを受け、スマートフォン、タブレット端末、パソコンなどの電子機器も破壊されていたとみられる。NASAはその際の経済的損失を2兆ドルと算出し、これは2005年8月に米南東部を襲ったハリケーン・カトリーナの被害額の20倍にもなるという。
10年以内に確率12%
過去に発生した太陽風で最大規模だったのは、「キャリントン・イベント」と命名された1859年の太陽風で、この時は激しい磁気嵐を誘発し、各地の発電所で火災が起きた。さらに普及し始めたばかりだった電報のための通信機器も回線がショートし、使いものにならなくなったという。
NASAは2年前の太陽風の規模は「キャリントン・イベントと少なくとも同レベルか、それ以上」としている。また、1989年の太陽風は2年前のものの約半分の威力だったが、カナダのケベック州一帯を停電させた。
気になるのは今後の太陽風の来襲だが、太陽風に関する研究結果を米科学誌「宇宙天気」に今年2月に発表した物理学者のピート・ライリー氏は、今後10年以内にキャリントン・イベントと同規模の強力な太陽風が地球を直撃する確率は12%と分析している。「過去50年の太陽風の記録を分析した結果、導いたのが12%という数字だ。当初は確率がとても高いことに自分でもかなり驚いたが、正確で誇張のない数字だと言える」とライリー氏は述べている。
太陽の活動は地球からコントロールすることはできないだけに、12%というのは不気味な数字だ。もし、直撃されれば、備えがあったとしても甚大な被害が出るのは必至で、さらに人体にもマグネタイトという微量な磁石があるため、人間の感情や行動パターンにも悪影響を及ぼすという説もある。

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