「PM2・5」をなんと9割減

images3 三菱日立パワーの排煙処理装置

三菱日立パワーシステムズの石炭火力発電所向け総合排煙処理システム。

微小粒子状物質「PM2.5」による大気汚染が深刻化する中国で、三菱重工業グループの三菱日立パワーシステムズが総合排煙処理システムの本格展開に乗り出す。公害の反省から日本は厳しい環境規制に対応した高性能装置の開発が進んでおり、三菱日立パワーは石炭火力発電所向けシステムで国内シェア9割を誇る。中国では、現地企業と合弁で環境装置専業の新会社を設立、石炭火力発電所から排出されるPM2.5などの煤塵(ばいじん)除去に取り組む計画だ。

三菱日立パワーは火力発電設備に加えて、総合排煙処理システムのすべての機器をワンストップで供給できる世界でも数少ないメーカーだ。これまで三菱重工が力を入れてきたが、今年2月に日立製作所と火力発電事業を統合して設立した三菱日立パワーがそれを引き継いだ。

同社の総合排煙処理システムは、ボイラーから出た排ガスを、窒素酸化物(NOx)を除去する脱硝装置▽煤塵を除去する電気集塵機▽硫黄酸化物(SOx)を除去する排煙脱硫装置-などに通すことで、クリーンにして煙突から排出するものだ。

特に排煙脱硫装置については、排ガスに特殊な液体を噴射してSOxを除去する湿式石灰石膏(せっこう)法による技術を開発し、1972年に実用化。200基を超える納入実績を誇る。

石炭や重油を使う発電プラントだけでなく化学プラントなどにも対応するほか、ガス中の煤塵を除去する能力も高いという。さらにその過程で生成される石膏は、石膏ボードやセメントなどに再利用することができ、資源リサイクルという側面でもメリットがある。

排ガスに対する規制が厳しい国内と違い、海外では規制自体がなかったり、装置も一部だけしか設置しなかったりするケースが少なくない。このため、技術や製品を持っていても、海外展開には限界があった。

ただ、中国でPM2.5による大気汚染が深刻化し、政府も規制強化に乗り出す中で、「ビジネスチャンスも広がる」(同社)とみて売り込みをかける。中国では、PM2.5発生源の20%前後を石炭火力発電所が占めるとされる一方で、今後も増設が計画されている。

中国では具体的に、電気集塵機で国内シェアの40%を握る環境装置大手FEIDAと折半出資で新会社を設立する。出資金は約6億8000万円で、董事長は三菱日立パワーから派遣。FEIDAと三菱日立パワーから環境システムの技術供与を受け、PM2.5などの煤塵を除去する技術・製品の設計、販売を手がける。秋に営業を開始し、3年後には売上高を200億円まで引き上げる計画だ。

三菱日立パワーは「自社の販売ルートと、電気集塵機を得意とするFEIDAのネットワークを使って、ビジネスを展開していく」と意気込む。

新会社が提供する高性能の煤塵除去システムを一般的な石炭火力発電所に導入した場合、PM2.5などの煤塵の排出を10分の1にまで減らすことができるという。

三菱日立パワーは「火力発電事業と環境事業の分野で世界ナンバーワンプレーヤーになる」(西澤隆人社長)という目標を掲げる。ガスタービンなどの火力発電システムだけでなく、総合排煙処理システムなどの環境関連設備もどれだけ海外で受注を増やしていけるかが成長のカギを握っている。

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