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th (6) 韓国経済が失速した理由

「飛んでいた飛行機のエンジンを止め、滑降飛行しているようだ。乗客はエンジンが止まったことも知らずに―」

ある財界関係者は現場で感じる体感景気をそう形容した。急速に成長してきた韓国経済が勢いを失い徐々に低迷しつつあるにもかかわらず、韓国の政府や国民が危機感を感じられずにいることへの懸念だ。

今年第1四半期(1-3月)の経済指標にもそうした兆候が表れている。第1四半期の成長率は0.9%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国で最低水準にとどまった。上半期の輸出は過去最高を更新したものの、上半期の企業による新規設備投資は2年前に比べ3分の1にまで落ち込んだ。現在よりも未来の動向を重視する株式市場も韓国だけが1年以上横ばいで推移している。

投資不振の原因としては、経済界のリーダーシップの空白が大きい。サムスンの李健熙(イ・ゴンヒ)会長は心筋梗塞で倒れ、2カ月も意識を回復していない。SKの崔泰源(チェ・テウォン)会長は刑期が2年7カ月残っている。太陽光事業に積極投資していたハンファの金升淵(キム・スンヨン)会長は執行猶予で釈放されたものの、心身共に疲れ切った状態で、報告すら受け付けないという。腎臓移植手術を受けたCJの李在賢(イ・ジェヒョン)会長は病院と拘置所を往復する日々で、創業者オーナーのプライドが強かった東部グループの金俊起(キム・ジュンギ)会長は東部製鉄の不良債権処理をめぐり、金融当局と苦しい綱引きを繰り広げている。暁星グループの趙錫来(チョ・ソクレ)会長は、通貨危機当時に実施した系列企業リストラをめぐる粉飾会計で法廷での攻防が長期化している。

それだけではない。ポスコ、KT、韓進、現代なども経営不振のグループ企業の処理に苦慮している。韓国の投資の80%以上を占める30大企業グループのうち、健全経営なのは1-2社にすぎないとされ、大規模投資を期待すること自体に無理がある。

こうした現実にもかかわらず、韓国政府は厳しい規制を相次いで打ち出している。一度の事故で売上高の最高5%の課徴金処分を下せる有害物質管理法、来年から企業に4兆ウォン(約4010億円)以上の負担を強いる温室効果ガス規制など挙げれば切りがない。

その上、金融当局が金科玉条のごとく考える持ち株会社法は非常に複雑で、大企業グループが持ち株会社体制に転換するには、系列企業同士の株式売買で数兆ウォン(数千億円)の無駄な資金を使うことになる。さらに、新規投資を行うたびに法的要件を満たすのが大変だ。持ち株会社(韓国語でチジュフェサ)を「詛呪(チョジュ)会社(呪いの会社)」と皮肉るのもうなずける。

韓国経済は今、民主化と成長という二つの価値のはざまにある。しかし、大企業を標的とするさまざまな規制を設けながら、同時に高度成長を成し遂げる魔術はなかなかない。コインを投げて、表と裏の両方が出ることを望むようなものだ。

新たな経済リーダーに助言したいのは、民主化と成長のいずれを選ぶのか明確にすることだ。成長を選んだならば、「企業を苦しめる8万ページの環境規制をなくす」と公言したキャメロン英首相のように明確なメッセージを発する必要がある。さもないと、企業も信頼して動けない。

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