台湾群衆が猛然抗議

画像の説明 「侵略国」高官の来訪に

中国の国務院台湾事務弁公室(国台弁)・張志軍主任(閣僚級)が六月二十五日、台湾を初訪問した。

台湾の空港に降り立った中国の張志軍・国台弁主任。笑顔を見せたが、狙いは台湾併呑に先立つ台湾国民の籠絡だ

台湾では三月以降、台中間のサービス貿易協定に反対する学生、民衆の運動が盛り上がり、両国「対話」が停滞した。中国はこうした状況を打開せんと、延期していた張志軍の派遣を決めたのだ。「台湾滞在中、中小企業の経営者や農業、漁業の関係者、それに学生らと交流する予定で、台湾社会の実情を把握して政治面での関係強化の足がかりにしたいねらい」(NHK)という。

一方国民党の馬英九政権も「対話」再開で低迷する支持率を挽回する考え。台中融和(中国にとれば「統一」)をめざす両者の思惑は一致している。

この日午前、桃園空港に降り立った張志軍はまず台湾語で挨拶を行い、感極まった表情を見せた。そして「台湾庶民の声を聞きたい」と強調するなど、「統一」の大障害となる台湾人の中国への反感、警戒心を除こうとしているのは明らか。

しかし空港内でその来訪を待ち構えていたのは、猛然たる抗議の群衆だった。

政党である「台湾団結連盟」(台連)や民間の台湾独立派諸団体のメンバーたちが中心で、警備の厳戒態勢の中、「台湾と中国は別の国」「侵略者は帰れ」などとスローガンを叫んだ。

抗議に結集した台湾団結連盟のメンバーたち。プラカードには「台湾の前途は台湾人が決定する」と。当然の訴えである

「侵略者」との怒号が飛び交ったのは当然だ。つい先ごろも国台弁は「台湾の前途は全中国人民が決定する」などと内外に向けて公言したばかりである。

ところが現地では、張志軍歓迎の群衆も結集した。中華愛国主義を掲げるヤクザ・チンピラ集団など、中国統一派の在台中国人たちだ。日頃は中華民国旗を掲げ、学生運動などを威嚇するが、この日は一切それを持たず、中国国旗と同じ赤色の横断幕を広げ「平和統一」「両岸は一家」などと連呼した。

張志軍歓迎のために動員された在台中国人勢力。その多くはゴロツキで、抗議グループへの威圧した

中国や国民党、または中国進出企業などからの操縦や資金で活動していると見られている。この日は国内某企業に八百元で雇われてきた人々も多数確認された。

台湾人に嫁いだ中国出身女性のグループも駆け付けた。これもまた故国の強い操作を受けた人々。これらが中国の移民侵略の尖兵ではないとは誰も言えない。

こうした勢力が抗議の陣営にたびたび挑発、襲撃を行い、そこへ警官が割って入るなどで、現地はしばしば大混乱に陥った。

そうした中、張志軍が空港に到着。医療用の連絡通路から、隣接する諾富特ホテルへ直接赴き、行政院大陸委員会の王郁琦主任委員(閣僚)との会談に臨んだ。

ホテル周辺にも学生運動のグループや法輪巧の学習者を含む多数の抗議の群衆が押し寄せた。

もちろん抗議勢力への当局の締め付けは厳重だ。空港では「意見発表エリア」なる一角に押し込めた。そして彼らが百名を超える歓迎陣ゴロツキの挑発、暴行を受けても、加害者ではなく被害者の方を一方的に抑えつけた。

国会を占拠した学生運動のリーダーたちも駆け付けた。警察の異常な厳戒態勢を批判

前日から諾富特ホテルに宿泊していた抗議グループ数名の部屋には、国家安全局員と思ぼしきグループがドアを蹴破って侵入し、彼らを軟禁した。こうした横暴、不法な措置に野党からは「戒厳令時代への逆戻りだ」と批判の声が巻き起こっている。

実際に国民党は民主時代に今日に至っても、民主主義を学んでいない。だからこそ圧倒的多数の民衆の声を無視し、公然と売国行為に走ることができるのだ。

ドアを蹴破って抗議グループの部屋に
飛び込んできた情報局員と思しき人々

さらには中華民国旗を以って現地に現れた男性から、国旗の没収もしている。中国政府はこの国旗を認めておらず、その掲揚は中国への敵意表明と受け止める。そこでそれを取り上げたのだろう。こういったところからも国民党政権の中国に対する属国心理が見て取れる。

この日の夜、張志軍は淡水の福容ホテルに投宿。やはり辺りは厳戒態勢が敷かれ、ここでも抗議の群衆の声は封殺された。

張志軍の帰国は二十八日。その間、台湾各地で民衆籠絡の旅が展開されるが、それに対して抗議活動も拡大しそうだ。

中国や国民党政権が揉み消す「台湾の前途は台湾人が決定する」との叫び。日本を含む国際社会はこれに知らん顔をすることは許されない。

コメント


認証コード0904

コメントは管理者の承認後に表示されます。