「青紫蘇」

金魚 江戸時代から防腐作用が重宝された「青紫蘇」

『名所江戸百景』にも登場した伊勢屋の名物料理にも

紫蘇と大葉、近年では韓国料理でおなじみのエゴマも含め、違いがおわかりになりますか?

紫蘇にはいろいろな種類がありますが、大きくは青紫蘇と赤紫蘇に分かれます。

その青紫蘇の、葉の部分がイコール大葉です。

紫蘇納豆豆腐
【材料】青紫蘇…5枚/納豆…1パック/豆腐…1/2丁/醤油…大さじ1/辛子…適量
【作り方】 ①青紫蘇3枚は粗みじんに切って辛子を溶いた醤油に15分程度浸しておき、納豆と混ぜる②青紫蘇2枚をちぎって豆腐に乗せ、1をかける。

なぜ別名がついたかというと、青紫蘇は芽も葉も花も実も食べられるので、市場で別々に出荷する際、区別するために、芽を「芽紫蘇」、あるいは「青芽」、花を「花穂」、実を「穂紫蘇」、葉っぱを「大葉」と呼ぶようになりました。

これを始めたのが大阪の市場らしく、現在でも西日本の方が「大葉」と呼ぶ率が高いです。

なお、エゴマの葉は大葉によく似ていますが、これは別物で、エゴマはその名の通り、食べると胡麻の香りがしますが、紫蘇独特の清涼感のある香りはしません。

紫蘇は中国から伝来し、縄文時代から薬草や香味野菜として用いられてきました。

紫蘇の薬効について書かれた文献は多く、生のまま食べても、乾燥させて煎じたものでも、喉の炎症を抑え、解熱、発汗作用があり、咽頭炎、口内炎、口臭予防にも効果があるとされています。

紫蘇と梅のすまし汁
【材料】青紫蘇…1枚/梅干し…1個/出汁…200ml/醤油…少々
【作り方】 ①青紫蘇は千切りにする。梅干しは種を取って裏ごしするか叩く。②鍋に出汁を沸かして梅干しを溶かし、汁椀に注いで青紫蘇をかける。※冷やしてもおいしくいただけます。

1704年に貝原益軒が書いた『菜譜』には、紫蘇の葉の乾燥法として、「紫蘇の葉は梅雨の前後に早く収穫すること。虫を取って洗い、半日陰干しすること。重なった葉は分けて干さないと腐る」とあります。

穴子と夏野菜の紫蘇巻き
【材料】青紫蘇…適量/煮穴子…1/2本/茗荷…2個/胡瓜…1本/茄子…1/2本/葱…適量
【作り方】 ①青紫蘇は軸を切る。煮穴子は1×4cm幅に切る。茗荷は縦に千切りに、胡瓜、茄子、葱は4cmの長さに切って太めの千切りにする。②具材をきれいに並べ、青紫蘇で巻いていただく。お好みで山葵醤油を添えて。

また、宮崎安貞の『農業全書』にも、「暑さにあえば葉の色青くなる。青くならないうちに、早く葉を摘むこと」と書かれていることから、青紫蘇を栽培されている方は、まさに今の時期に収穫しておくことをお勧めします。

乾燥させた紫蘇の葉10g程度を2リットルの水で煎じ、1/3になるまで煮詰めたら、これを1日分として朝昼晩に分け、温め直して飲むと、咳止めや風邪のひき始めに効くそうです。

また近年は、抗アレルギー作用と抗炎症作用がある「ロズマリン酸」というポリフェノールを多く含むことから、アトピー性皮膚炎の改善に役立つとも言われています。

紫蘇ともやしの和え物
【材料】青紫蘇…3枚/もやし…1つかみ/削りがつお…少々/煎酒(またはポン酢)…大さじ1
【作り方】 ①青紫蘇は軸を切って粗みじんに切る。もやしは蒸すか、電子レンジで1分半程度加熱する。②青紫蘇ともやしを混ぜて煎酒で和え、削りがつおをかける。
※煎酒の作り方
鍋に酒1カップ(200ml)、梅干し1個、塩少々を入れて弱火にかけ、煮立ってきたら削りがつおを入れ、5~6分煮詰めて漉す。

このほかにも、ビタミンB1&B2やカロテンの含有率が高く、抗酸化作用が期待できます。

紫蘇味噌胡桃和え
【材料】青紫蘇…30枚/胡桃…大さじ2/味噌…大さじ2/みりん…大さじ1/酒…大さじ1/砂糖…大さじ1/胡麻油…大さじ1
【作り方】 ①青紫蘇は洗って軸を切り取り、ざく切りにしてふきんなどで水気を拭う。胡桃は細かく刻む。②味噌、みりん、酒、砂糖をよく混ぜ合わせる。③鍋に胡麻油を熱し、青紫蘇を入れて軽く炒め、2入れて水気がなくなるまで煮詰めたら、胡桃を混ぜる。

ちなみに紫蘇という漢字は、『三国志』にも度々登場する伝説の名医・華佗《かだ》が、食中毒で死にかけていた若者を、紫の葉で蘇《よみがえ》らせたことからつけられた名前だという説が有力です。

青紫蘇の用途は多く、香味野菜として汁物、和え物、漬け物などに用いられるほか、江戸時代にはすでに刺身のつまとして使われていました。

鴨肉の紫蘇巻き
【材料】青紫蘇…5枚/合鴨スライス…5枚/長葱…1/2本/酒…大さじ2/塩…少々/醤油…大さじ1/おろし山葵…適量
【作り方】 ①酒に塩を溶かし、合鴨スライスを漬けて1時間ほど置く。青紫蘇は軸を切って縦半分に切る。長葱は4cm幅に切って縦に4等分する。②青紫蘇2枚を合鴨に乗せて巻き、爪楊枝で止める。③フライパンに2を並べ、漬け汁も入れて弱火にかける。長葱を加えてフタをし、蒸し焼きにする。肉に火が通ったら醤油を加えて煮詰める。おろし山葵を添えて。

1697年に書かれた『本朝食鑑』には、「紫蘇の葉は魚肉の毒を去る」とあります。

これは紫蘇の葉が持つ香り成分である「ペリルアルデヒド」の効果で、防腐作用があることがわかっています。

浮世絵師・歌川広重の代表作の一つである『名所江戸百景』の第12景、「上野山した」には、上野寛永寺の門前にある伊勢屋の絵が描かれています。

紺色の暖簾には「紫蘇めし」と大きく染め抜かれており、伊勢屋の名物が紫蘇飯であったことが分かります。

しらす入り紫蘇飯
【材料】青紫蘇…3枚/しらす…大さじ2/温かいご飯…1杯/白胡麻…小さじ1
【作り方】 ①青紫蘇はみじん切りにして塩で揉む。②1としらすを温かいご飯に混ぜ、茶碗に盛り、白胡麻をかける。お好みで、塩と醤油で味をつけた、出汁をかけていただく。

この伊勢屋は、後に「雁鍋《がんなべ》」という有名な料理屋に替わり、幕末から明治の人々が通う人気店になりました。

夏目漱石の 「虞美人草」、森鴎外の「雁」、正岡子規の「病寐六尺」といった明治の文豪たちの名作にも、「山下の雁鍋」のことが書かれていますが、残念ながら明治39年に廃業になりました。

実はこの店、明治元年の上野戦争の際に新政府軍が立て籠り、二階から彰義隊を狙撃して勝利のきっかけになったことでも有名です。

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