官業癒着

金魚 深まる不信 

アルツハイマー病研究、ずさんな補助

認知症薬を販売する製薬会社が関与して研究内容がゆがまないのか――。そうした疑念を招かないために行う「利益相反委員会」の審査を経ないで、厚生労働省が補助金2億円を出していた。行政と製薬会社の関係に不信感が高まるのは避けられない。▼1面参照

エーザイの主力商品である認知症治療薬アリセプトは、2010年に米国で特許が切れて米国での売り上げが90%以上減り、11年に国内での特許も切れた。エーザイは治療薬開発を目指し07年に始まった国家プロジェクト「J―ADNI(アドニ)1」に当初から出向者や資金を出すなど積極的に関与。10年には事務局を担う「バイオテクノロジー開発技術研究組合」の理事長に内藤晴夫社長が就任。全国38病院から集まる臨床研究データを登録・管理するデータセンターの室長格もエーザイの出向社員だった。

昨年始まった5カ年計画「J―ADNI2」は同組合が代表となり、補助金を直接受け、データの所有権も得た。患者を極めて早い段階で見つけ治療薬を試すことも予定しており、製薬会社にとっては新たな層の患者に薬の効果を試し市場拡大を狙える魅力がある。

このため、関係者の間では「製薬会社による製薬会社のための国費研究」(同組合元職員)と指摘されていた。実際、同組合は昨年8月にデータ改ざん疑惑の内部告発を受けながら放置。データセンター室長格のエーザイ出向社員が厚労省から証拠データ保全を要請されたのに部下に書き換えさせていたことも発覚し、厚労省とエーザイの関係に不信が強まっていた。

国はデータ改ざん疑惑を受けADNI2の今年度予算5億円を凍結している。新たに補助金を巡る問題が発覚し、事業継続への批判が高まるのは必至だ。

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