なぜか米シカゴ検察が告発 

朝顔 ウクライナのガス業界トップが逮捕 

ロシアからのガス輸入に携わるウクライナの有力企業トップ2人が相次ぎ逮捕され、その背景をめぐり憶測を呼んでいる。うち1人の逮捕は米国の検察の要請を受けたもので、ウクライナをめぐる政治的な思惑があるとの見方が浮上しているためだ。双方の事件とも巨額の不正取り引きが絡んでおり、ウクライナビジネスの闇の深さも浮き彫りにしている。

「これは隠された政治的動機に基づいた、オーストリアの司法制度の乱用だ」

ウクライナの著名オリガルヒ(新興寡占資本家)、ドミトロ・フィルタシュ氏が率いる「グループDF」は2日、声明を発表し、フィルタシュ氏の逮捕をそう非難した。

フィルタシュ氏は3月12日、訪問先のオーストリアで逮捕された。容疑は、ハンガリーやスリランカの企業家らと共に、インド政府要人に総額約1800万ドル(約18億円)を賄賂として提供し、同国のチタン鉱山利権を不当に取得しようとしたとの疑いだ。採掘されたチタンは、米シカゴに本社を置くボーイング社に売却される計画だったという。対象となったチタンの採掘では、年間5億ドル(約500億円)の売り上げを見込んでいた。

フィルタシュ氏はオーストリア司法の歴史で最大額という1億7200万ドル(約172億円)を支払い、保釈されたという。検察はフィルタシュ氏らに対し、総額1000億ドル(約10兆円)超の資産没収を求めている。

 事件には一見奇妙な点があった。それは、米シカゴの検察当局がフィルタシュ氏を告発し、逮捕に至ったということだ。検察は、同氏を米国に送還するよう求めている。シカゴの地元紙は「シカゴの住民に何ら被害を与えていないにも関わらず、インド高官を収賄したウクライナ人の事件に米国の検察が関心を持つということは、表面的には不可解にも見える」と指摘した。

 グループDFは声明で「告訴は何らの真実にも基づいていない。ウクライナが経済的、政治的な再建を必要としているこの時に、米国が我々の会長の引き渡しを求めていることは決して偶然ではない」とし、米国を強く非難した。

 米紙ワシントン・ポストは、フィルタシュ氏がロシアの国営天然ガス企業「ガスプロム」の内情に精通していることから「米国の司法当局はガスプロムに関するあらゆる情報を得ようとするだろう」と指摘する。フィルタシュ氏が傘下に持つ企業群には、ガスプロムと共同で設立し、ロシア産ガスの輸入を手がける企業もある。ポスト紙は、ガスプロムがロシアのプーチン政権を財政面から支え、莫大な資産を武器にウクライナ政界にも多大な影響力を行使している点などを指摘し、「米国とロシアがウクライナをめぐり対立を続けるなか、米捜査当局はインドでの事件などより、フィルタシュ氏が持つガスプロムに関する知識に関心があるはずだ」と断じた。

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