“ガス紛争”

画像の説明 ロシア仕掛けた“ガス紛争”、将来に高い代償も 欧州、8割高の政治的価格に嫌気

ロシアがウクライナ向けの天然ガス供給を停止し、欧州諸国ではウクライナ経由のパイプラインを通じたロシア産ガスの輸入に支障が出ることが懸念されている。ロシアがウクライナ向けの供給を止めるのは2006年と09年に次いで3度目。価格決定にロシアの政治的思惑がからんでいることが、“ガス紛争”が相次ぐ大きな理由の一つだ。

問題の発端は、露国営天然ガス企業「ガスプロム」が、第2四半期からのウクライナ向け天然ガス価格を1千立方メートル当たり485ドル(約5万円)へと、前期比8割も引き上げたことだ。

ロシアは10年、親露派のヤヌコビッチ前政権との間で、ウクライナ南部クリミア半島でのロシア黒海艦隊の駐留期限を延長する見返りに、天然ガス価格を引き下げることで合意。昨年末にも同政権が欧州連合(EU)との連合協定調印を見送ったのを受けて、「割引」を導入した。

ロシアによる3月のクリミア併合やウクライナのガス料金滞納を理由に、ロシアは前政権期の価格引き下げ合意が効力を失ったと主張している。

産地からの距離などに関係なく決まってきた、ロシア産ガスの価格

EUの天然ガス消費の約3割がロシア産で、うち42%はウクライナ経由で輸送されている。09年にはロシアが欧州向け供給まで停止し、厳寒期の各国に影響が広がった。ウクライナには12月までのガス備蓄があるものの、需要が増える冬場までに事態が好転しなければ同様の危機が起きる恐れがある。

ロシアは過去の“紛争”で「市場原理に基づく価格への移行」を強調し、対ウクライナ価格の引き上げを正当化した。だが、ロシア産ガスの価格は、産地からの距離などに関係なく決まってきたのが実情だ。

昨年の時点で、ロシアと経済連合を組むベラルーシ向けは1千立方メートル当たり165ドルだったのに対し、厳しい対露姿勢のリトアニア向けは465ドルだった。欧州諸国向けの平均は372ドル程度とみられている。

ロシアは今回の問題を受け、11年に開通したドイツ向けパイプライン「北ルート」や、12年末に着工した南欧向け「南ルート」の重要性が鮮明になったとしている。だが、特に「南ルート」の経済性は当初から疑問視され、EUは対露依存度を下げようと躍起だ。たび重なる“紛争”は、長期的にはウクライナよりロシアに打撃を与えるとも指摘されている。

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